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  今回は、2001年のアナン国連事務総長の訪日の際に設置が発表された「人間の安全保障委員会」(緒方貞子、アマルティア・セン両共同議長)が2003年にアナン国連事務総長に提出したレポートのアウトラインを取り上げました。

今回取り上げた文章は、これまでの例のように立場の異なる主張のぶつかり合いからどのような妥協がなされているのか(あるいはそれがどのように表現の英文になっているのか)を読み込む対象となるようなものというよりも、委員会の報告書を取り上げましたので、内容としては同じ方向を向いた「提言」といった色彩が強いものです。また、世界の著名な「有識者」が委員として名を連ねた報告書ですから、そのアウトラインの英文も洗練された格調高いものになっています。

やり方としては、パラグラフ毎に英文を読みつつ、参加者同士で気づきの点や疑問点、そこから敷衍される意図等について、アスペンセミナーをイメージしつつ、全員参加での議論を活発に行いました。

参加者が自由な立場から、時に素朴な疑問を、時に専門的な知識に基づく鋭い分析をし、この分野にまったく知見がない参加者も知的刺激を存分に得ることができたと思います。

例えばこのアウトラインの最初のバラグラフにある” Political liberalization and democratization opens new opportunities but also new fault lines, such as political and economic instabilities and conflicts within states.”というセンテンスについて、instabilityを惹起させる要因としてpolitical liberalizationとdemocratizationを指摘するのはかなり意欲的、あるいは踏み込んだ指摘ではないか、といった意見や、”Protection shields people from dangers”のshieldsという単語の使い方が面白い(興味深い)、”protection”という名目で実質的に内政干渉に相当することができてしまうのではないか(あるいはその目的であえてprotectionが必要だということを謳っているのではないか)といったことなど、文章を読みながら、それぞれが異なる視点やアプローチで単語の使い方からセンテンスの内容まで感じたこと、思ったことをそのまま発言していきました。

なかでも、参加者の意見や感覚が異なったのは、”Human Security”と”Human Rights”は概念として重なっているのか、大小関係なのか、あるいは重なっているとしたらどちらが広い概念なのかという点でした。アウトラインのパラ4には”Human security complements state security, furthers human development and enhances human rights”というセンテンスがあり、これをきっかけにhuman securityとhuman rightsの議論が盛り上がったのですが、ここでのポイントはなにが正解かではなく、なにを感じたのか、それはなぜか、他の人はどう思うのか、などの意見をかわすことで自分自身の意見も深く掘り下げていくきっかけになるということです。

このようにフラットでインタラクティブなやりとりは、実はかなり贅沢な「知の磁場」あるいは「知の互酬関係」といってもいいのかも知れません。特に今回取り上げた英文は格調が高いものであったことから、単なる「英語の勉強としてではなく、その文章に化体している意図を丁寧に読み解くこと、つまり、なんのためにその単語が選択され、そのセンテンスが書かれているのかを考えることは、広く深いバックヤードの知識も動員されざるをえず、日常生活の惰性で肥満化した脳みそをシャッフルさせた心地よい「脳の筋トレ」となりました。

ご参加された方々、ありがとうございました。

講義資料 第8回レジュメ
講義資料 「人間の安全保障委員会」報告書アウトライン
参考資料 外務省取りまとめ(「人間の安全保障」に言及されている文書)

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