「世界を創る、次世代グローバル・リーダーの育成を目指して」

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「世界を創る、次世代グローバル・リーダーの育成を目指して」

合田圭介(ごうだけいすけ)東京大学教授

今回は、東京大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の双方で研究と教育活動を行われており、世界経済フォーラム(WEF)のヤング・グローバル・リーダー(2014年)にも選ばれた合田圭介東京大学教授に、ご自身の経歴から研究への取り組み姿勢、世界レベルで競争していくために意識していることなどをお話いただきました。合田研究室のホームページはこちら

インタビュアー:河合朋奈

Q)まず合田先生のご経歴について教えてください。

  エンジニアの父の影響で、物心ついた頃から工作が好きで、将来は研究者になってものづくりがしたいと考えていました。早稲田大学に入学しましたが、科学というのはもともとグローバルなもので、国際的な力を身につける必要がありますし、私が勉強したかった素粒子という分野で研究活動が盛んだったのはアメリカだったこと、それに少しでも早く海外に行った方が良いという勧めもあったので、大学を中退して渡米しました。

  渡米後は、あとでカリフォルニア大学(UC)に編入することを想定しつつ、TOEFLの受験のみで入学できるコミュニティー・カレッジにいったん入り、そこでよい成績を得てUCに編入しました。UCの理学部物理学科を卒業(首席)した後はマサチューセッツ工科大学(MIT)の博士課程、カリフォルニア工科大学の客員研究員、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の博士研究員とキャリアを重ね、現在は東京大学理学系研究科教授とUCLAの非常勤准教授を兼任しています。

Q)現在はどのような研究をされているのでしょうか?

  当初は素粒子の研究をしていましたが、研究分野はカリフォルニア大学卒業後、学校が変わる度に変わってきています。MITでは物理学、UCLAでは電気工学、そして今は化学です。実は今の科学者の研究活動においては、分野を変えるというのが当たり前になっています。これはインターネットの普及による影響と言えるでしょう。つまり、一昔前までは優秀な研究者が特定の研究機関に集まり、研究情報がそこから外に出ることがあまりなかったので、20年位は一つの研究分野で仕事をしていくことができたのです。

  しかし、インターネットの普及により、ある程度のインフラさえ整っていれば世界中どこででも高いレベルの研究ができるようになりました。これにより研究の競争が激しくなって、1つの分野が生まれ、発展して衰退するまでのタイムスパンが短くなっています。つまり、今の時代、5年程度で研究分野を発展させ変えていかないと研究者として生き残ることができないのです。学生にも、世界を見据えて研究をするように言っています。

Q)世界で活躍する人材を創出するという点において、日本とアメリカで教育プログラムの違いはありますか? あるとすればどんなところでしょうか?

  これはグローバル人材とかの話をするときによく聞かれる質問の1つなのですが、アメリカと日本の教育プログラムにおいて大きく違うのは一般教養の位置づけですね。アメリカではリーダーを育成しようという意図が明確で、それを常に念頭において教育プログラムを組んでおり、一般教養をしっかり勉強させています。

  私はよく言うんですけど、アメリカはcommanderを育成するための教育、日本はsoldierを育成するための教育ですね。1つの集団を機能させる為には、数人のよいcommanderと従順なsoldierが必要です。これは戦場であれ企業であれ同様でしょう。大学も研究室も同じです。アメリカでは優秀なリーダーを育成しようとしていて、そのために幅広い知識とある程度の専門性を兼ね備えるための教育プログラムが組まれています。具体的には、大学1、2年時に一般教養をみっちりやる。これは、いわゆる文系も理系も同じクラスでやります。文学も社会学もあれば、数学、物理、化学もある。そこでの成績が3年次以降の学科を決めることになるので、みんなしっかり勉強する。アメリカの場合、本当に専門的な教育というのは大学院から始まるので、学部の3、4年生ではまだ学科の基礎学力を身につけることに力が注がれている。

  私はここがアメリカが一番強いところだと思うのですが、基礎教育ができていて幅広い一般教養の能力が高い。だから、リーダーというのは幅広い知識を持ちつつ専門性もあるものだと思うのですが、アメリカではこのリーダーを輩出するしくみになっている。これにより、幅広い知識をもとにいろいろな分野の職人のことを理解しつつ、それらの職人を別の職人と結びつける、connectする力が身につくわけです。

  日本では、東大でも1、2年生は一般教養を駒場でやって、東大でいうところの「進学振り分け」を経て専門にいくシステムをとっているわけですが、他の大学ではそうした形で一般教養をしっかりやるシステムはあまりないですね。特に私立大学だとひどい。小論文と英語だけで受験できて、受験に不要な科目は高校1年生のときからもう理系科目全部を捨てて勉強しない。これではリーダーは育ちません。

  この「幅広い知識と専門性を兼ね備える」ことは研究活動においても重要です。先ほども触れましたが、インターネットの普及によってある分野の研究が注目を浴びてから研究が成熟し衰退するまでのタイムスパンがとても短い、だからこそ新しい分野にどんどん入っていける、自分の知識や経験を次の分野と統合していける人材が求められるわけです。この点、日本の教育課程では、例えば高校の早い段階で理系と文系に分かれる、多くの大学の学部では早い段階で専門ごとに分かれる、など早い段階から専門教育を行ってしまうので、リーダーではなく職人を育てていることになります。東大でも日本の大学では先駆けて一般教養に力を入れていますが、文系と理系が混合で授業を受けることがない分、まだアメリカに遅れをとっていると思います。

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  Q)世界経済フォーラム(WEF)からヤング・グローバル・リーダーに選出された理由と、そこでの取り組みについて教えてください。

  選出されたのは、グローバルスケールでの研究活動と教育活動でリーダーシップを発揮している点が評価されたものだととらえています。東京大学とUCLAという2つの大学を兼任して研究活動をしているというのは、日本では珍しいですからね。

  世界経済フォーラムには色々な会議があり、毎年世界で約200人選出されるヤング・グローバル・リーダーだけの集まりもあれば地域ごとの集まりなどもあります。ヤング・グローバル・リーダーは教育から経済、ビジネスまであらゆる分野でグローバルに活躍している40歳未満のメンバーの集まりです。比較的ビジネス分野の方が多いかな。話し合われる内容としては「2030年に世界がどうあって欲しいか」といった社会全体、世界全体のことをテーマとした議論が中心です。2030年に向けて、今後の日本及び世界をどう創りあげていくのか、どういう方向性で、どうリーダーシップを発揮しているのか、具体的にどのセクターでどのように行動していくべきなのか。そういったことを議論します。

Q)そのようなグローバルな視点を踏まえて、先生の研究室では学生への指導をどのように工夫されていますか?

  私の研究室でも常に次世代のグローバル・リーダーを育てることを念頭に、研究室の教育プログラムを考えています。例えば、外国人とチームを組ませて研究をさせるとか、海外の大学と共同研究を行ったりして、プロジェクトベースで異なる文化の人とのコミュニケーション能力を高め、リーダーシップを発揮せざるを得ない環境を作っていきます。そうすると、否応なしに英語を使わざるを得ないわけで、そのような環境を半強制的に作っています。

  具体的には、私が兼任しているUCLAの研究室と共同研究を行い、こちらから学生を派遣し、向こうの学生をこちらに受け入れるなど、研究室同士の交流を積極的に行っています。英語は当たり前のスキルなので、こうした英語を使わざるを得ない環境で自発的に話させることで訓練していきます。両方の文化を知ることが学生にとってプラスになるのです。

  また、常に世界のトップを意識させるように、世界の最先端の研究結果を紹介しながら、世界のトップと張り合っていくためにはグローバルに活動することが必要条件であるということを伝えています。グローバルに、というのは目的でなく手段であるのだと。また、研究室に限らず、学部生向けの一般教養の講義でも、私は全部英語で授業をしています。できる人、やる気のある人をどんどん伸ばしていきたいと思っています。

Q)これからグローバルなキャリア構築を目指す学生へのアドバイス、メッセージをお願いいたします。

  世界の現状を見れば、これからグローバルレベルで競争力を持たない人は淘汰されていくと思います。日本は平和なので危機感というものを感じにくいかもしれないけれど、アメリカや他のアジア諸国の人たちは、生きるために勉強している。特にアメリカは、どんどん移民が入ってくるので、ちょっとでも怠ければ自分の立場を奪われるという危機感があります。ですから、学生にはこのままでは世界と渡り合っていけないという危機感を持ち、与えられるのを待つのではなく自発的に考えて自ら生み出していくんだという自覚を持って欲しいですね。

  この点、理系の場合は研究実績や数値で客観的に評価しやすく、「世界で戦う」ということがイメージしやすいですけれど、文系分野では評価軸に定性的な側面があるので、理系に比べると「世界で戦う」ことを意識しにくいかもしれません。しかし、自分のバックグラウンドが文系や理系にかかわらず、世界で競争し勝ち残っていかないと生きていけないんだということをぜひ認識して欲しいですね。

Q)最後に、今後の展望についてお願いいたします。

  東大でも最も若い教授の1人ということで、他の人たちができないことをしていきたいですね。先日内閣府が「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」のプログラム・マネージャーとして12人発表した中の1人に選出されました。今後は研究室としての実績も積み上げていきながら、このプログラムの下で最先端の研究を進めていきます。新しいことをどんどんやっていきたいと思っています。

  どうもありがとうございました。

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