皆様、はじめまして牧野由佳と申します。現在、NGOならびに大学に所属し、カンボジアにおけるJICA草の根プロジェクト『カンボジア モンドルキリ県 口腔保健向上プロジェクト』に従事しております。

  今回ICBさまのご厚意でリレーエッセイに参加させていただくことになりました。有難いことにこれまで沢山の方に支えていただきながら、色々な経験をさせていただきました。これらの経験をシェアさせていただくことは私の責務のように感じております。私の経験がほんの少しでも国際的にお仕事をされたい方、そして進路に悩んでいる方のお役に立てればと思っております。

  さてエッセイ第一回目は私がなぜ国際人・国際保健*を目指すようになったかを綴りたいと思います。

  もともと周りに医療関係者が多く、そして自分のメンタルが少し弱かったこともあり高校生の頃『将来は自分のような弱い人間をサポートできる精神科医になりたい』と思っておりましたが、医学部受験に失敗。合格をいただいた歯学部に進学することとなりました。
  皆様が想像されますように歯科医師はもちろん知識も必要ですが、技術がものをいう職業。元来不器用な私は学生時代、臨床実習で非常に苦労しまして大学を辞めてしまいたいと何度も思っていました。

  そんな私がなぜ国際人を目指すことになったのか。振り返ってみますと、洋画や洋楽が好きで、他の科目に比べれば英語の成績がよかったので将来は留学してみたいなという気持ちが中学生の頃からぼんやりとありました。
  そして、大学時代、臨床実習で非常に苦労し悶々していたところ、大学の予防歯科学教室の先生より『大学院で予防歯科学教室に入ると国際機関でのインターンシップ実現の可能性があります』という話をお聞きし、インターンシップが何なのかも実はよくわかっていなかったのですが、もともと海外に興味のあった私は大学卒業後、一年の研修医を経て大学院に進学いたしました。

  私の進学先である予防歯科学教室では口腔疾患(う蝕・歯周病)の疫学、口腔と全身健康の関係、口臭ならびに国際口腔保健に関する研究を行っておりました。更に世界保健機関(WHO)の口腔保健部の日本で唯一の協力機関として口腔保健政策立案のための学術的な支援等を実施しておりました。(詳しくはこちら)

  さて、私は大学院4年の間、国際口腔保健に関する研究を行い、論文執筆のみならず途上国での短期研修、WHO口腔保健部でのインターンシップを経験いたしました。特にWHOでのインターンシップは私のその後の進路に大きな影響を与えました。
  私はインターンシップ期間中、スーパーバイザーの下WHOの口腔保健政策や世界における口腔疾患に関するデータ収集・解析方法を学びました。またインターン向けの研修会を通して口腔保健以外についても学ぶ機会を得ました。

  そのような経験を通して感じたことは昨今報道されていますように国連機関も世界同時不況の影響で予算が逼迫しており、限られた予算の中でWHOではミレニアム開発目標でも挙げられている『乳幼児死亡率引き下げ、妊産婦健康状態の改善、HIV/AIDS、マラリア等の疾病蔓延の防止』に対する施策の優先度が高く、口腔保健は後回しになりがちであるということでした。

  私が驚いたことの一つに、2010年当時WHO本部には約2500人の専門官(医師等)がいたのですが、そのうち歯科医師はなんと1人。このことは口腔保健の優先度の低さを象徴しているような気がいたしました。
一般に口腔保健は死とは直結しないと思われがちですが、全身の健康と口腔の健康の関係は実証されつつあり、全身の健康を推進していく上で口腔の健康を推進していくことは必要不可欠であり、更に人生の楽しみである食べること・コミュニケーションを語る上で口腔の健康は決して無視することはできないと思います。インターンシップでの経験を通し、他の分野と比較して優先度の低い口腔保健をどうやって推進していけばいいのだろうかと考えるようになりました。

  また研修当時、WHO本部全体に世界各国から集まった200名程のインターンがおり、国籍も専攻も違うけれども保健分野をよくしたいという志を持った彼らとの交流はただ海外に興味があった私に『国際保健の分野で働いていきたい』という目標をもたらすきっかけとなりました。

  約半年のインターンシップ終了後、大学院卒業後の進路を具体的に考えるようになり、実際に口腔保健をどこかの国で実践してみたいと思い始めていた矢先、現在参加しているカンボジアにおけるJICAの草の根プロジェクトの話をいただきました。

  次回以降、現在参加しているプロジェクトについて、カンボジアの日常を通して感じていること、そして将来について等々、記載していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

*国際保健・国際保健医療学『国や地域での健康の水準や、保健医療サービスの状況を示す指標として何が適切であるかを明らかにし、国や地域間に見られる健康の水準や保健医療サービスの格差を明らかにし、そのような格差を生じた原因を解明し、格差を縮小する手段を研究開発する学問』国際保健医療学会編「国際保健医療学 第2版」(杏林書院,2005年)

  (尚、記載いたしましたことは私の個人的な意見であり、関係する機関等を代表するものではありません。)