第1回 G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言を読む
「国際共同声明を読み込む講座」の第1回目は、2008年に日本で開催されたG8北海道洞爺湖サミットの首脳宣言文を取り上げました。首脳宣言だけで70以上のパラグラフがあるのですが、首脳宣言以外にも「世界の食糧安全保障に関するG8首脳声明」や「テロ対策に関するG8首脳声明」などが出されています。
今回の講義では、この北海道洞爺湖サミットの際に大きなテーマとなった環境問題の部分に焦点をあてて、各パラグラフから読み取れる環境保護派の考え方や経済成長重視派の意向、さらには両者の調整の結果として年輪のように文章に反映されている合意までの議論の経過を読み込んでみました。
例えば、この首脳宣言ではパラ23で環境保護重視の立場の主張と思われる”Sectoral approaches are useful tools among others for achieving national emission reduction objectives.”というセンテンスがありますが、そのセンテンスの前には”These plans may reflect a diversity of mitigation and adaption approaches.”とのセンテンスが挿入されており、また後ろには”We recognize that what the major developed economies do will differ from what major developing economies do, consistent with the principle of common but differentiated responsibilities and respective capabilities.”というセンテンスを書き込んで、「各国の個別事情への斟酌」といった典型的な妥協点の探り方をしている点に注目することができます。
また、国際共同文書では他の既存の文章からの引用をよく行う点に触れつつ、引用される文書が自分にとって必ずしも望ましくない場合の削除に向けた議論の仕方(初歩的には必要性の有無を議論する〜高度な技としてはあえて引用する文書を増加させることで、個別の引用文書の意義を希薄化(さらには一律に削除させる方向にもっていく)を目指す方法など)について説明し、多種類のカードを持っていると自分の交渉力や現場対応力がつくことについて学びました。
その他にも、コンセンサスを模索するキーワードとして、”appropriate”, “where applicable”, “taking into account”などが文脈の中でどのように使われているかについても説明し、理解を深めることができたと思います。
今回の「汗と涙の結晶」キーフレーズは
“common but differentiated responsibilities and respective capabilities (para 23)”です。