【インタビュー】高見香織さん「まずコミュニケーション。そして情熱。」

「まずコミュニケーション。そして情熱。」

高見香織(たかみかおり)さん

【略歴】
  9歳まで米国で暮らす。9歳のときいったん日本に帰国。1年間日本の公立小学校に通う。その後、イギリスでの教育課程を経て18歳の時に日本に帰国し、慶応大学経済学部へ入学。卒業後はフジテレビに入社、調査部、報道部等計10年間在籍。同社退社後、米コロンビア大学大学院政治経済学部で修士課程を取得し、ニューヨークの投資会社にてアナリスト・ステラテジストとして2年間、レストラン開発会社で開発プロジェクトに2年間の実績を積む。その後、日本に戻り、東京の不動産ファンドでアジア開発担当として勤務、現在はフリーランスで外資系企業の日本進出のコンサルタント等をしている。

Q)海外生活が長いですが、日本に帰国されたときに感じるギャップで印象的なことは?
  私は9歳からの1年間を日本で暮らし、公立小学校へ通いました。その際に感じたギャップは、皆がランドセルを持ち、学校では上履きに履き替えるということでした。米では一人一人が自分のバックで通学し、室内でも土足で過ごすため、ランドセルを持つ習慣と、校舎に入る際に上履きに履き替えるという習慣が全くありませんでした。体育の時に使用する体操服に対しても、米では使用しません。そうした全体が統一的に横並びとされることに違和感がありました。

  その他には、生徒が自分たちで学校を掃除することにも驚きました。米では、掃除担当の方々がそれぞれの学校にいて、その方々が掃除をしてくれるため、生徒は掃除をする必要がありません。生徒が自ら掃除をするという習慣を知らずに帰宅した翌日、前日に掃除をさぼった罰として一人で教室の掃除を行うことになりました。子供・児童に学校がなにを学ばせるのか、という点の考え方が日本と米国では異なるように感じました。

  また、登下校を子供たちだけで行うことに日本の特殊性があるかも知れません。例えば米国では小学生の登下校は保護者が送迎するというのが一般的です。日本では、子供たちが自ら登下校することを「自立(independence)させるため」と説明するようですが、米国ならこれを“independence”とは考えず、子供の安全上の問題ととらえるでしょう。

  このように文化、習慣、考え方の違いで様々なギャップを感じました。

Q)修士課程を目指し再び米国留学を決めた理由は?
  実は大学を卒業してフジテレビに入社する前から、海外の大学院で修士課程さらには博士課程を取得したいと漠然には考えていました。そしてフジテレビに入社し、幼い頃からの“ジャーナリストになる”という夢は叶えましたが、仕事をしていく中で当初抱いていたジャーナリストに対する理想と現実にギャップを覚え、新しい世界で自分が楽しいと思える仕事をしたいという思いがより強くなってきました。そうしたことから、コロンビア大学大学院でジャーナリズムとは全く異なった分野の政治経済を専攻することにしました。

Q)グローバルで活躍する場合、必要とされる能力はどのようなものだとお考えですか?
  一番必要とされるのが、意思決定のスピートが早さだと思います。そのためには、自分の仕事・発言にしっかりと責任を持ち、相手を説得させられるような理論的な交渉ができる必要があると思います。コンサルタントとして日本と外国の企業の間に入って交渉・調整する経験をさせて頂き、日本企業の場合は最終的な判断が下されるまでに審査・承認のための稟議があり、意思決定のスピードが遅いという印象を受けました。

  一方で外資系企業の場合は、担当者が決断できる範囲が明確で意思決定がスムーズです。2カ国以上の複数の企業が一緒に仕事をする場合、海外企業の意思決定のスピードは早いが、日本企業の意思決定スピードが遅いことがあるため、それに足が引っ張られて仕事全体がスムーズに進まない事があります。また、異なる価値観とか相手の意見をきちんと聞いた上で自分の意見を主張するといった基本的なコミュニケーション能力は不可欠と感じます。

Q)どうしたらそのような能力を身につけられますか?
  私は、子供が育ってきた環境(主に初等教育)に依存する部分が大きいと思います。
  例えば、日本の場合子供同士の喧嘩は当事者同士で解決させるように、つまり「子供のけんかに大人は入らない(入るべきでない)」と言われる事が多々ありますが、私はそれでは子供は学べないと思います。米国の小学校の場合は、まずは必ず先生が仲裁に入ります。これは先生の立場でどちらがいいか悪いかを判断するためではなく、先生が仲裁に入ることで、子供たちがお互いに相手の話を聞くように促すのです。当事者のAさんから、相手のBさんがAさんに何を言ったか、それでAさんがどう思ったのかを聞き、もう一方のBさんにも同様のことをしてBさんの気持ちも確認します。そうしたことを通じて、お互いが相手の気持ちや状況を理解する方法を学ばせることができるのです。

  こうした経験を積み重ねて問題解決能力や交渉力が身につき、中学生以降は小学校で学んだことを生かし、生徒間で解決するようになります。小学校のうちに、問題解決の仕方や論理的な考え方を先生から学ぶことで、将来社会人になってからもしっかりとした議論ができるようになります。

  仕事をしていく上でも、“私にこの仕事を任せて下さい”と自信を持って上司に伝え、任せてもらえるよう上司を説得する交渉力が重要なわけなので、ぜひ子供のうちにこうしたロジカルシンキングを身につけてほしいと思います。

Q)最後にグローバルなキャリアを目指す方々へのメッセージをお願いします。
  外国とビジネスをする場合、外国の方にはこちらが明確に言ったことや見えているものしか理解できません。日本の文化のように“相手が察してくれる”ということはないわけです。

  また、日本では礼儀として受け入れられることでも、海外では怪しく見られることもあります。日本では常識でも海外では非常識、あるいはその逆の場合などいろいろあります。日本の美意識は素晴らしいのですが、いかんせんビジネスの場では発揮されないことが多いように感じられます。自分の意見や立場をはっきりと目に見える形で伝えることが、相手とのコミュニケーションにおいて非常に大切と思います。

  つまり、まずは明確なコニュニケーションをきちんととれること。これが出発点だと思います。その上で、単に意思を伝達するコミュニケーション能力だけではなく、そこに情熱を加えていって欲しいと思います。いっしょに楽しく前向きな仕事をしていく「仲間」とは情熱を共有したくなります。情熱は国境を越え、相手が誰であろうとしっかりと受け入れられます。強い情熱を持って行動することで道は開けます。是非頑張って頂きたいと思います。

  ありがとうございました。

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