ICBコラムVol.3:議長としてオンライン国際会議を初めて経験する(監事:津川清一)

こんにちは。ICB事務局です。

大型連休真っ只中でございますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

新型コロナウイルスの影響で例年とは全く違う連休をお過ごしの方も多いかと思います。

 

ICBコラムVol.3

今回はICBの津川清一監事が、最近、完全にオンラインで開催された国際会議の議長を務めるという貴重な経験をされたので、その時の様子を実況中継します。

------

議長としてオンライン国際会議を初めて経験する

-コロナにすっかりやられた!-

・国連関係の国際機関の会合が、3月31日から4月9日まで約2週間にわたり完全リモートで開催され、125名が参加し、私が議長を務めました。

・国連のセキュリティ部門から、この国際機関の建物への入構が全面的に禁止されたため、全ての会議が完全なリモート開催とならざるをえなくなったためです。通常は、会合の開始前に議長・副議長で構成される運営委員会の会議を2回行いますが、今回は準備に万全を期すため、オンラインにて計4回行いました。

・全体的な印象としては極めてうまくいきました。1日の会合時間数は通常の半分程度(4時間)でしたが、成果は通常の会合とあまり変わりませんでした。遠隔会議を開催する場合にいつも問題になるのが各地域間の時差の問題です。どうしても会議が深夜になる地域が出てしまいますが、今回はジュネーブ時間の11:00(東京18:00、サンフランシスコ02:00、ワシントン05:00)に開始としました。このため、日本を含むアジア地域は参加しやすい時間帯になりました。

・参加者全員が各自のPCのメインチャンネルに投影された文書を見ながら発言を聞き、それに対する反応がメインチャンネルの左側にあるGroup chatで即時にみられるのはとても効率的でした。時間が倍に使える感じです。

・通常の会合ですと、1人の発言を聞き終わった後に議場からの発言を求めるのですが、今回のシステムでは、発言者が発言している間にGroup chatにおいて発言に対する意見がわらわらっと書き込まれます。書き込まれた意見は参加者全員が即座に読めますので、発言が終わると同時に発言内容とそれに対する全体の反応が分かり、議長としてすぐ次のアクションに移れます。

・今回のシステムでは、参加者が発言の許可を求めるのもGroup chatで行われますので、発言を求める順番が記録に残ります。通常の会議ですと、手を挙げている人を議長が見逃して、後でもめることもあるので新しい方式は効率的かつ公平であると言えます。

・このように良いことずくめなのですが、効率的過ぎて、議長としては少し疲れる面もあります。通常の会合ですと、手を挙げている人を探す間に数秒間休んだり、発言者の順番を意図的に変えるなど、いわゆる「ハンドルの遊び」の部分がありますが、これができませんでした。
・また、今回の会合は規模が大きすぎて、参加者がPC上で他の参加者の顔を見れるようにはなっていませんでした。このため、特に議長の立場からすると、各発言に対する参加者の顔色や表情の変化を見たり、会場全体の雰囲気をつかんだりすることができませんでした。通常の会合では、議長はこれらに基づいて議事進行をしているのだなあ、ということを改めて感じました。これらの問題は今後システムの改善で解決できるかもしれません。

・専門家レベルの小さな会合ではなく、今回のような大きな全体会合レベルでは、微妙な話をテーマとして扱う場合があります。通常の会合ですと、議長が休み時間中とかコーヒーブレークを使って主要国に根回しができますが、リモート会合ではこれがやりにくいです。メインのツールの他に、少人数で気軽に話し合えるツールがあるといいな、と思いました。

・さらに、通常の会合ですと、6か国語(英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語及びアラビア語)の同時通訳が入ります。言語を平等に扱わないと、参加メンバーから強いクレームが来ます。しかし今回は、使用言語は英語のみということで押し切りました。リモート会合で同時通訳を行うのはシステム上難しいからです。そのために強いクレームが来るかと身構えていましたが、最後まで問題ありませんでした。ただし、英語と他言語間の文書の自動翻訳ができるAIベースのツールを準備しておきました。これがなかなかの優れもので、実用レベルに達していました。

・会議の事前準備として一番効果があったのは、contingency planといって各作業グループの議長の代理人を事前に決めておいたことです。会議中に何回か回線が切れるという突発事態も発生しましたが、これを決めておいたおかげで議論が中断しませんでした。通常の会合ですと、多少会議が中断しても状況が分かりますので、それほどイライラしなくて済みますが、リモート会議で空白時間ができるととてもストレスを感じてしまいます。幸い、このような事態が発生しなかったのは良かったです。

・なお、事務局が会合開始前に参加者に対して丁寧なトレーニングを何回か行ってくれたおかげで、ツールの運用が開始直後から非常にスムーズに行われたのも良い成果を生めた要因の一つかもしれません。

・今後の国際会議はコロナをきっかけとして、リモート会議が主流になるかもしれませんので、このやり方をうまく使う方法をマスターしておくと良いと思います。 例えば、これまでは外国語での発言を理解するためにリスニングの力を高めておく必要がありましたが、これからはPC上に現れる短いテキストを一瞬で読み、理解する力をつけておくと、スムーズに会議の流れに乗れると思います。これには、英語でチャットをする訓練をしておくとよいと思います。

・我々の国際機関でも、これまで特別な委員会を作ってオンライン会議を促進するための方策について検討してきました。しかし、差し迫った緊急性がないため、大きな変革は行われませんでした。
ところが、これまで100年もの間、当たり前のように思われてきた国際会議の開催方法がコロナのせいで大きく変わろうとしているようです。

・「コロナにすっかりやられた!」との妙な感慨を味わった2週間でした。

ICBメールマガジンを 購読しませんか

セミナー情報のほか、 さまざまな役立つ情報をご提供します。
ICBのfacebook
facebook